クッキー1枚分の幸せ
まだ実家にいた高校までの日々、毎晩繰り返される母の嫌味と酒漬けで深夜に帰ってくる父。
ギクシャクした両親にそんな辛い関係ならいっそ別れてくれと願った日々
そんな気持ちを引きずったまま東京に出た大学時代に聞いた歌詞がある。
パパとママのケンカの声が聞こえてくる Dear Dad Dear Mam
TVのボリュームをあげて聞こえないようにする Dear GOD!
神様に誓ったって、うまくいかなくなるかもしんない
分かってるつもりだよきちんと
他人だったんだもんねしょうがない
ホテルみたいなあたしんち
はやくチェックアウトしていきたい
なんで月はただ見ているの
心配しなくていいよ・・・
ああ、そう、そんな気持ち。
自分の抱えていた苦しみを掬い上げてくれたような気がした。
そして泣いた。叫びながら泣いた。精一杯、心の限り歌いながら・・・・・・泣いた。
川本真琴の歌はその日から俺のそばにあって、辛いとき、苦しいとき、
そして楽しいとき、俺の心を潤してくれた。
正直なところ、はじめて「山羊王のテーマ」を聞いた時、あまり魅力的に感じなかった。
デビュー当時のような疾走感もなければ「FRAGILE」のようなスケールがある曲でもない。
“間違いなく彼女が楽しんで作っている”という、その感覚は伝わるのだけれど、その先が見えない。「なにを言いたいんだ?この人は?」そういう印象だった。
手が震え、心臓が不安げに脈を刻んでいる中、ふいにバッグの中に入れてきたCDを思い出した。
色々前フリした手前もあってレビューを書こうと出張先まで持ってきていた「山羊王のテーマ」だった。
悲しいからじゃない、ホッとしたからだ。
沁みこんでくるメロディー
やわらかなビートとピアノの音色。タイガーフェイクファーの澄んだ声
立ちすくんだ背中を少しだけ押してくれる。そんなやさしい曲
「山羊王のテーマ」はそんな曲だった
今日の今日まで、このCDで注目していたのは吉田戦車作詞というぶっ飛んだコンセプトの
「成城学園前の歌」だったが、やはりこのCDのメインは「山羊王のテーマ」でよかったんだと思う。
この人の「gobbledygook(わけのわからない)」な歌詞とメロディーは多分言葉じゃなくて・・・こんな事を大真面目に書くのは赤面ものなのだけれど、例えば魔法みたいなものなんじゃないかと思う。
♪DingDongDang♪DingDongDaDang♪
愉快なメロディーがきこえてくる。
悲しいことも辛いことを抱えたまま、白昼に見る楽しい夢のはじまりだ。
奇妙な服のピエロや二本足で歩くライオン達が笛を吹き太鼓を叩きながら楽しく踊る、小さなパレードだ。
たった4分の短い夢。
そしてあとには「元気」のプレゼントがクッキー1枚分。
そんなイメージの「山羊王のテーマ」
店頭には多分並んでいないだろうけれどもしよければ一枚どうぞ。 癒されますよ☆
(* 出張中のためネット接続のできる8/25に一括でアップしています)